クロスインデックスの通訳・翻訳コーディネーターの雑感
逐次通訳から始まり、逐次通訳に戻る
[2010/06/17]
通訳には様々な種類があります。「方法」としては、「逐次通訳」、「同時通訳」など。「目的」によっては、「法廷(司法)」通訳」、「医療通訳」など。2つの言語を理解する人物が、それぞれの言語しか分らない人同士のコミュニケーションの手助けをする、という意味ではどれも同じものです。日本では、江戸時代の長崎や琉球王国に置かれていた、中国語の通訳=唐通事や、ポルトガル語との南蛮貿易の際の通訳役人=通詞などにその起源を求めることができます。あるいはもっと古代、ヤマトや、クマソ、アイヌ、エミシといった部族の間にも、通訳はいたのかもしれません。
時代は下って現代。世界各国の人々が、違う国に出かけるようになったこの時代、通訳者は常に必要とされています。中でも、話者の話を数十秒〜数分ごとに区切って、通訳していく方式、逐次通訳は、一般的に通訳技術の基礎と言われています。対する同時通訳は、話者の話を聞くとほぼ同時に訳出を行う形態で、通訳者の中でも花形、大御所、先生と呼ばれ、尊敬の念を集めています。同時通訳には、全神経を集中し、耳から入った言語を、即座に違う言語に置き換える特殊技術が必要となり、この技術の習得には、相当の時間を要することも、間違いありません。
「逐次通訳と同時通訳、どちらが難しい?」よく問われる命題です。同時通訳が、その場の会話の流れに乗って訳出していくため、多少つじつまが合わなくとも、聞き手側もなんとなく理解して受け流していく部分があります。
しかし逐次通訳は、そういうわけにはいきません。例えば、英語でスピーチが行われ、聞き手が日本人である場合。聞き手側は、話者ではなく、通訳の言葉に耳を傾けます。表面では優雅に、手元は必死にノートをとり、話者が一旦言葉を区切ると、一斉に注目される中、正確かつ美しくわかりやすい日本語を訳出する。これは大変な度胸がいります。記憶力、集中力、会話の構成能力。ありとあらゆることが、逐次通訳者に求められます。
だからこそ、同時通訳を何十年もこなしている方でも、逐次は難しい、とおっしゃるのは、こういう背景があるからなのです。
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